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三角関係で男性殺害「女性に防止義務」と賠償命令
2002年に静岡県沼津市の民宿で、東京都内の歯科医師の男性(当時53歳)が愛知県内の男に刺殺された事件を巡り、歯科医師の母親が、男の交際相手で民宿を経営していた女性に約1億1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。
女性は歯科医師とも交際し、三角関係となっていたが、藤下健裁判長は「女性は男が嫉妬(しっと)心にかられて凶行に及ぶことを予想でき、事件の発生を防ぐ義務があった」と認定、約6800万円の支払いを命じた。
判決によると、男は02年8月20日未明、カギのかかっていない民宿の勝手口から侵入し、客室で寝ていた歯科医師の首を包丁で刺すなどして殺害した。
判決は、「女性は歯科医師が被害者になることも想定できた」と指摘し、「女性が施錠していれば男が侵入せず、事件が発生しなかった可能性が高い」と述べた。2006年10月14日1時57分 読売新聞
男女関係のもつれや交際を巡る刑事事件は、絶えることなく起きています。上記事件そのものは、精神疾患にまつわるものではありません。しかし、心のありようという部分では、当事者間に問題がなかったとはいえないでしょう。
現実に一人の男性が亡くなり、複数の男性と交際していた女性に対し、損害賠償の支払い命令が出ました。女性が控訴するかどうかはわかりませんが、今回は、「認知の歪み」に関連したお話をししたいと思います。
精神保健の分野でいえば、いわゆる「人格障害」の領域に入るものです。たとえば、仕事上に受けた注意について、嫌がらせだと受け止めたり、目が合っただけで、相手が自分に好意を持っていると受け止めたりする、交際相手から別れ話を切り出され、交際相手が新しく交際を始めた別の異性さえいなければ寄りが戻せると思う、などです。
一般には、会社に損失を与える、怪我をさせるなど、被害、もしくは被害者が出るような事態に至らなければ、本人の認知の歪みによって起きていることでも、何とか示談で収められたり「○○さんは、そういう人だから」で済む場合もあるでしょう。
しかし度が過ぎれば、裁判に訴える事態や警察が介入する事態にまでになります。
医療の側面から見た場合、仮に、加害者に人格障害という診断名がついても、矯正を含めた治療については、困難が伴います。一般に、精神療法や家族療法、認知行動療法などが挙げられますが、効果・実績の面ではどの療法がいいなどとは軽はずみには言えないほど、決して簡単なものではありません。
矯正・治療に取り組んでいくまず一歩としては、本人の両親(保護者)の存在は欠かせません。以前から申し上げている通り、精神科医療に結びつけるには、家族の力が必須だからです。また、認知の歪みから反社会的な行動を取った場合には、精神保健福祉法に則った手続き、もしくは、警察介入による法の裁きを受けることになります。
原則として20歳を過ぎれば、事件・事故が発生した場合、本人の責任で社会に対し責任を取ることになりますが、その先の治療や更生、矯正を考えた時には、本人の歩んできた過程を振り返らざるを得ません。家族関係、特に親子の関係に立ち返り、対応を考えていくことが必要となります。
この事件も、今回の裁判の経過を見る限りでは、男女関係のもつれとその代償として片付けるには、あまりにも深い背景があると考えざるを得ません。


